04

 相庭と愛の交際がスタートしてから一週間が経った。
 二人の交際は意外にも、続いていた。”意外にも”というのは、私は愛が相庭に飽きて別れるのがそれぐらいではないかと予測というか、希望的観測をしていたらだ。見事にその希望は打ち砕かれたわけだが……。
 人は、自分にないものを求めるというが、それは本当なのだろうか。

「おーす」
 朝廊下を歩いていると、後ろからよく知る声がかかった。振り返る前から誰かはすぐに分かった。なにせ、絶賛片想い中の相手なのだから。
  「……おはよー」
 さっと相庭の隣背後を確認した。良かった。ヤツはいないか。そう言えば、あの子はいつも遅刻スレスレだったな。
「松下さぁ、この間の中間どうだった?」
「いや、人に聞く前に自分が言いなよ。人に聞く余裕があるってことは、良かったの?」
「いやぁ〜、分かるかい?前より順位が上がったんだよな〜。三つほど」
「前って一年の時の学年末だよね。そん時、相庭って確か……143位だっけ?」
「134位だよ!勝手に人の順位を下げるな」
 ちなみに私の学年は約210人前後。つまり、半分より上の順位。上がったと言っても、三つじゃ、印象はあまり変わらないのだが……。しかし、顔と同じで順位まで標準の少し上とは。
「で?松下は?」
 触れてくれるなよ、相庭クン。
「……ああ、今日も日差しが眩しいね」
「あれ?これってもしかしてはぐらかされてる?おい、言えやこら」
 やっぱり気づいたか。気づかないわけないか。自分でもわざとらしいと思ったぐらいだもん。
 でも、言えねー。わざわざ、人に、それも好きな相手に順位が下がったなんて言いたくない。バカをさらしてるようなもんじゃん。
「何?もしかして、俺より下なの?」
「いや、それはないよ」
「そこは即答かよ」
 そうだよ。即答だよ。言っておくが、100位を切ったことなんてないよ。
 格好をつけさせて。見栄っ張りなんだよ。良いところしか見せたくないんだよ。
「しょうがないじゃん、順位が上がった人に下がった順位なんか言いたくないよ」
「ああ、やっぱり下がったんだ。御愁傷様ぁ」
「……ムカつく」
 そう言って、相庭のお尻を膝で蹴飛ばした。いや、本当に今のはムカついた。

 一体、誰の、

「じゃあ、またな」
「うん」
 相庭のクラスの前で別れる。「おはよー」と中から声が聞こえた。

 誰のせいで、

 その中に「勇太」と、相庭の名前を呼び捨てにした、今の時間から来ているのは珍しい女の名前を聞いてイラッとした。
 相庭のクラスには目を向けずに通り過ぎる。
 ああ、今、不快指数急上昇中だな。

 誰のせいで、順位が下がったと思ってるんだよ。

 あんたら二人が話しているところを思い出すだけで、イライラするの。

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